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ワイン醸造家の内田修のワインコラム


vol.11

こんにちは。ボルドーの内田です。
こちらでは急に春を通り越して夏が来てしまい、街を見ると、半袖・半ズボンの人も多くなってきました。
季節の移り変わりが突然やってくるので、体調を崩しやすいです。私はおかげさまで全く健康で相変わらず畑に出ています。
この季節、ボルドーの旬の味といえば、ジロンド川で獲れるAloses(アローズ)という川魚です。
とは言っても、日本の鮎のようなかわいい感じではなく、大型の鯉ほどあるフナのような色合いの、パッと見は食べるのを遠慮したいような魚なのですが、これが非常においしい!焼くと身はホロホロと柔らかくふわっと脂が香ります。短い時期しか味わえないので貴重ですよ。

◇ブドウづくりの土壌
フランスは農業大国ですが、国土すべてが豊かな土壌というわけではありません。
ここ、ボルドーのメドック地区も、基本的には農業に適さない、小石混じりの砂利土壌のところが多いのです。
そんな、常識的に考えれば貧しい土地も、緩やかな丘による水はけのよさ、日当たりのよさという条件と、マイナス要素のように思われる小石が太陽に温まり、昼夜の寒暖差の大きなフランスにおいても夜間に熱を土に与えてくれるという素晴らしい特長のおかげで、世界に誇るワインの一大産地となったのです。

こういった土壌には私の畑と同じカベルネ・ソーヴィニョンの栽培に適しています。
ですから、新しく造成するブドウ畑などで私が見かけた中では、わざと石をよそから持ってきて大量に混ぜるところもあるほどです。

そして私の畑は、表面は石が混じり、乾いているのですが、同じ畑の中でも微妙に土壌が違い、少し深く掘ると粘土質の層があったりもします。
割と珍しい独特な土壌だと思います。
しかし、この土壌もブドウの味を決める要素の大切な一因ですから、それによって美味しいワインを造ることができていることには、“テロワール”への感謝をしなければなりません。

土といえば以前にも書きましたが、私はBIO栽培をしておりますので、このころから草取り作業や害虫対策が私を休ませてくれません。
畝の間はトラクターで耕していきますが、ブドウの樹と樹の間はすべて手作業です。
反対の端まで数日かけて済ませると、また最初に作業した端のほうから草が育っています。この力強さは見習いたいものです…。

vol.10

こんにちは。ボルドーの内田です。
もう日本は春を飛び越えてすでに夏のような暑さですね。
行楽シーズンですが、ここフランスではハイシーズンを狙ったかのような公共交通機関のストライキがまた3か月という長期間で始まりました。
しっかりと前もって予約していても、当日に急にフライトがキャンセルになったりします。
自分の便が飛ぶかどうかは賭けです。
日本では飛行機がキャンセルになったりすればカウンターの方は平謝りの光景が繰り広げられますが、こちらでは賃上げなどの要求は当然の権利ですので、お客さんに謝ったりはしません。
飽くまでも「ご理解ありがとうございます」という姿勢で、カウンターに「私のフライトが飛ばないんですが」と交渉しに行っても「ああ!そうですね!」と笑顔です。
もちろん、便の変更などの手続きはしてくれますが…。

◇日本へ一時帰国
1年のほとんどをボルドーで過ごす私ですが、ワイン会などで自分の造ったワインのご紹介などをさせて頂くため、畑仕事のやや落ち着く冬から春にかけて1か月ほど日本へ帰国します。
今年はフランスでの仕事がずれこんでしまい、いつもよりも遅い帰国となりました。
焦りましたが、そのおかげで7年ぶりに桜の花を見ることもできました。
日本人が満開の桜に無条件に心惹かれるのはなぜでしょうね。
不思議ですよね。桜にしかない特別感を久しぶりに味わえました。

今回の帰国でも、全国各地でワイン会が開催され、一足先に航空便で日本へ届いた2016年ヴィンテージのMIRACLEの試飲をしていただき皆様の生の感想を伺ったり、普段離れていても変わらずに応援してくださる方々にお会いできたのは、本当に嬉しかったです!

今回、特にハッとさせられたのは、MIRACLEを試飲してくださったある方が、
「これは、1700年代のボルドーワインですね!」
と、感想をくださったことです。まさにそうなのです!

ボルドーワインといえば重い赤、という印象かと思いますが、実は元々、ボルドーのワインといえば現在の私のワインのように明るい色合いの柔らかな味わいのものだったのです。
そのようなワインを当時イギリス人たちは「クラレット」と呼んでいました。
私は伝統的な手法を取り入れた栽培、醸造をしていますから、不自然なコントロールをしない、昔のままのワインが再現されているのです。
皆さんぜひ、昔のフランス貴族が楽しんでいたその味わいを、現代で楽しんでくださいね。

vol.9

こんにちは。ボルドーの内田です。
日本ではもう桜の咲く頃でしょうか。ポイヤックの私の自宅では、去年株分けしてもらった大戦前のリラが根付き、暖かくなるとともに若葉の芽吹く様子が見られるようになりました。
春というのは命がつながれていくのをより強く感じる季節ですね。

◇出荷に向けて
この記事が皆さんのお目にかかるころには、ドメーヌウチダの2016年ヴィンテージワインが海上を日本へ向けて旅している途中だと思います。

木樽の中でゆっくりと約1年間寝かされていたそのワインが「製品」になるには、まず木樽からワインボトルに詰め替えられます。
1日で一気にすべてのワインを瓶詰しますので、友人たちにまたしても手伝ってもらうのです。
専門の業者にボトル詰めのための機械を運び入れてもらい、機械を動かすための大容量の電源も用意します。
1日だけの工場の出来上がりです。

新しい空瓶を機械に乗せる係、ワインを詰められコルクで栓をされたボトルを専用のボックスに積み上げていく係、機械を管理するプロ、そして全体の指揮は私が執ります。
機械はどんどん動いていきますから、人間も遅れをとらないように秒単位の動きを要求されます。
爆発的な忙しさは収穫時にも勝ります。

全てのボトル詰めを終えると、1本ずつ不備がないか自分の目でのチェックも欠かせません。
チェックをしながら、今度はラベル張りです。
去年までは手貼りでがんばっていたのですが、どうしてもムラができるので、今年はラベル貼りの機械を中古で手に入れました。なんと、シャトー・ラフィットからの出物です!
さすがにラフィット、中古でも機械の状態がよく今年のラベル貼り作業は非常に楽で正確でしたよ。
ありがたいです。

最後の仕上げはこだわりの蠟封です。
これはさすがに手作業でないとできません。
鍋に蠟を溶かし、ボトルの口を浸し、冷やし、固定させてようやく「製品」となります。
一人で600本を1日で蠟封した時には、さすがに腕がパンパンになりました…。
それでも、ワインを待っていてくださる方がたくさんいらっしゃると思うと、ついつい1日も早く、と無茶をしてしまいます。

箱詰めも手作業で丁寧に。
そんな思いを込めたワインは、もうすぐ日本の皆様のもとへと届きます!

vol.8

こんにちは。ボルドーの内田です。
一旦寒さのピークを過ぎたかに思えましたが、この地方では珍しい雪が積もりました。
路面が凍ったせいなのか、派手にブドウ畑に突っ込んでいる車も見ましたよ。
近くのシャトーの友人などは「あれって飛んだんじゃない?」というほど。
メドックの畑の多い地域では信号もないですし、見晴らしもいいので運転しやすいようですが、実はなだらかな丘の連続なので意外と油断できないのです。

そして、やはりフランスですから車の保険の手続きも、とってもスロー。
なので、かなり長い間、事故車はその場に置きっぱなしとなります。
ちなみに私の畑は森に囲まれているので車が突っ込むことはまずないです。
鹿や野ウサギはよく来ていますけどね。

◇ガイド内田
私の本業はブドウ農家でありワイン生産者です。
ですが、日本からのお客様を各シャトーにご案内するガイドの仕事も時々しています。
普通のガイドさんにはない内容になるように心がけておりますし、長くボルドーに住んでいるのでいろんな交渉もしやすいのです。

各シャトーには専属のガイドがいますので、いったんシャトーに入ってしまうと私の仕事は通訳になります。
しかし、何度も訪れているとガイドの説明も頭に入ってしまっていますので、時折フランス語の説明を追い越してしまったり、間違いを正したり…。

そんな調子なので、ガイドには
「OSAMU、鍵を渡すからお客様を案内してきてよ。」
などと冗談を言われてしまうのです。
現地の一番新鮮な情報などはガイド仲間たちから仕入れることが多いので、日本からのお客様にはいつも喜んでいただいております。

ガイドといえば、少し変わった仕事もありました。
ボルドーワイン委員会の日本向けPVの撮影コーディネーターです。
「ボルドーワインは古臭い」という固定概念を覆すべく、日本人の”ネオギャル“がボルドーのシャトーを、若手のソムリエと見て回り、ワインの楽しみ方を知るという「新しいボルドー」のイメージを伝えるためのショートムービーです。
その撮影のためのシャトーへの予約、ドローンを飛ばすための公的な許可、取材するレストランとの交渉…。
山のような仕事をしましたが、おまけで私も日本人醸造家として出演させてもらいました。

伝統的なボルドーと、若い醸造家たちの挑戦、それをゼロから知っていくギャル、というなかなか面白いものができているようです。
ぜひご覧になってみてください。→ 【ボルドーワイン委員会(C.I.V.B)日本公式サイト】

vol.7

こんにちは。ボルドーの内田です。
真冬のこの時期、私の住むメドック地方のブドウ畑では、剪定作業が佳境を迎えています。

収穫と違って素人にはできない仕事ですから、少人数のプロが枝を一本ずつ見極めて不要な枝を切り落とし、夏に良い育ち方をするように残した枝を固定していきます。

ボルドーでは冬は天候が悪く、風も吹きつける冷たい雨の中での仕事は本当に辛いものです。時間もかかりますし、気の遠くなるような作業ですが、ここで収穫の善し悪しが決まりますので根気よく丁寧に進めていくのです。

◇ブドウの樹
皆さんがフランスへ旅行に来られるのは、ブドウの葉の生い茂る夏や、美しくブドウが実る秋が多いかと思いますが、すっかり葉も枯れ落ちたこの時期にブドウ畑を見まわすと、樹の幹が露わになっていますので、その樹が若いのか、年を経ているのか、よくわかって面白いですよ。

例えば、私の畑のブドウの樹は、平均して樹齢30年ほどですが、ある所には、古いもので100年を超えて生きている樹も!
隣村であるマルゴーでワイン造りをする年配のムッシューの畑にはまさにそんな樹が何本か存在しています。

「この樹は、2回の大戦を経験しているんだよ。」と、ムッシューは誇りを込めて、愛おしそうに眺めながら話してくれました。

途中で病気になって、治療のため大きくくり抜かれたその老木は満身創痍ではありますが、未だに実をつけるのです。
古ければ古いほどに樹は深く広く根を張り、素晴らしく美味しい実がなります。
その愛情に応えるかのようなたたずまいには、本当に感動を覚えます。

もちろん、樹にも寿命はありますし、畑仕事中にうっかりトラクターに引っかかって抜けてしまったり、病気で枯れてしまったりということもあります。
そういった後処理も今の季節しかできない仕事です。

まずは残っている根っこを掘って取り除くことから始めます。
何十年も張っていた根ですから一筋縄ではいきません。
今年掘ったものの中には3メートルを超える長さの根もありました。
途中で冬眠中のカエルを起こしてしまったり、ミミズがいたりと、BIO栽培ならではの小さな生き物にも遭遇します。
こうして堀った穴には、これもまたBIOの、植物由来の肥料を混ぜ、苗木を植えるのです。

苗木が成長して、ワインに使えるブドウができるのは、一般的に3年目から。
私の手で植えたブドウの樹も、100年の時を経て、実をつけてくれるでしょうか。
知る由もないことですが、未来への希望を託します。

vol.6

こんにちは。ボルドーの内田です。
日本で記事がアップされる頃にはもう新年でしょうか。

フランスではお正月というイベントはとてもあっさり過ぎてしまいます。
だいたい2日からは通常通りに仕事が始まります。
その代わり、クリスマスは各家庭で入念な準備をして迎えます。

Maman(お母さん)は家の中や外を美しくデコレーションし、何か月も前から、クリスマスのメニューに頭を悩ませて山のような買い物をします。
定番メニューは、シャポン(去勢された雄鶏)・マグレ(鴨の胸肉)・フォワグラ・牡蠣・ホロホロ鳥といったところです。
特にシャンパーニュなどの発泡性ワインと合わせることが多いですね。
定番があるところや家族で過ごすところなどは日本のお正月のようなものかもしれませんね。

◇圧搾機から木樽へ
さて、前回のお話ではワインの発酵が始まったところでしたが、細かく分析を重ね「今だ!」というタイミングで圧搾機にかけてプレス作業をしていきます。
凄まじい力でプレスするので、残った果皮はブロックのように固まります。

ちなみに、ワインに含まれるポリフェノールに抗酸化作用があり、美容や健康にいいことは日本でも有名ですが、この果皮によるところが大きいのです。
そこに目を付けたボルドーのあるシャトーは、プレスした後の果皮を使った化粧品でエステを始めて大ヒットし、いまでは本業のワインづくりをしのぎ立派な高級スパができたのはこちらでは有名な話で、ボルドー各地にそのスパの作った化粧品を販売する店舗ができているほどです。
私も一度、残った果皮を自宅のバスタブに入れて、ブドウ風呂にしてみたことがあります。
肌にはとても良いように思いましたが、何しろ後の掃除が大変ですのでご家庭ではお勧めしません…。

そして、肝心のプレス後のワインは、木樽の中についに入ることになります。
ここでワインは第二の発酵であるマロラクティック発酵(乳酸菌発酵)をします。
ここまでくると、私が手を加えられることはほとんどありません。
ただただ木樽と自然に任せて見守っていくのです。

木樽は呼吸をしますので、中のワインが少しずつ蒸発します。(その事を天使の分け前と言います。)
ですから、ときおり継ぎ足してあげます。
そして、ワインは長い眠りにつくのです。

収穫から木樽に入るまでをお伝えしましたが、この工程は第一原料であるブドウの状態によって毎年変わってきます。
そのブドウの状態をよく理解し、分析し最高の状態に近づけるのが、醸造家の仕事なのです。

vol.5

こんにちは。ボルドーの内田です。
11月も後半に入り、こちらも冬の気配がしてきました。
ボルドーはフランスの南西部ですので、そんなに寒くはないはずなのですが、日差しがない日にはすでに氷点下になる日もあります。
朝はブドウ畑に白く霜が降りています。
霧の中でうっすら白く霜を纏ったブドウ畑に朝日がさす様子は神秘的な光景です。

◇醸造作業
前回のコラムにも書きましたように、私の醸造所では昔ながらの手作業にこだわっています。
余談ですがエグラパージュ(除梗作業)に使用する木製の網のような道具があるのですが、相当な年代物を、近くでワインづくりをしている年配のムッシューにお借りしています。
今や販売していないのです。
同じものが作れないか、ボルドーの木工所へ持っていって見てもらったこともあるのですが、「これだけの丁寧な仕事は、今では相当な時間とコストがかかるのでできない。」と断られてしまいました。

そんな貴重な道具を使ってのエグラパージュが終わった後は、ブドウの実を櫂棒でつぶしながら混ぜていきます。
これは意外にも大変な力仕事です。
慣れないとたった一回の作業で手のひらはマメだらけになってしまいます。

そして翌日からは早くも発酵が始まります。
この発酵ですが、昔はブドウ畑で自然に付着する酵母によって行われていました。
しかし、現在、普通のブドウ畑では農薬散布をするのでこの大事な酵母は死んでしまいます。
ですから醸造の際に酵母を買ってきて添加しなければ発酵は始まらないのです。
酵母を添加することで安定した発酵をするので悪いことばかりではありません。
自然の酵母は、何百とある種類の中からその年によってどの酵母が働くのかわからないからです。

しかし、そんな不安定な中でも偉大なワインが生まれていたのもまた事実です。
私のブドウ畑ではBIO栽培ですのでこの野生の酵母が生きていて仕事をしてくれます。
それならば伝統に敬意を表して自然にまかせたワインづくりをしよう、と酵母を添加することはあえてしません。
発酵が始まると、醸造家としては気の休まるときがありません。
日に3回ほどピジャージュ(櫂入れ作業)をしますが、そのたび糖度・温度を計器で測り、テイスティングも行います。
刻一刻と状態が変化しますから、夜中でも気になり、飛び起きて醸造所へ様子を見に行くこともしばしばです。
発酵が進むにつれて、ワインの香りは濃密になってアルコールをはっきり感じるようになります。

そして次の工程はプレスです。

vol.4

こんにちは。ボルドーの内田です。
フランスは日本より一足早く秋も深まっています。
朝は8時になってもまだ外は真っ暗です。

秋になると、いよいよ収穫が始まります!
ここメドックでもポルトガルやスペインなどの隣国から収穫のために何百人とバスに乗って収穫人がやってきます。
なにしろ収穫を始めてしまえばノンストップで終わらせなければいけません。
晴れている日を狙って大人数で一気に収穫してしまうのです。
この時期はトラクターや巨大なトラックが田舎道を超低速で走り、後ろに大渋滞が起こるのは風物詩のようなものですが、お互い様なのでこちらものんびり走ります。

◇ブドウ収穫
そして、私の畑でも待ちに待った収穫を行いました。
今年は春先から霜被害に合い、初夏には猛暑、夏には冷夏に長雨とブドウづくりには大変に厳しい年になりました。
他のほとんどの畑は農薬を使っていますが、私の畑はBIO栽培なので、草刈りや葉むしり作業などの手は加えますが天候によって大きく収穫量も変わります。
今年は例年の5分の1ほどの実りとなりました。
それでも実ったブドウは私の努力に応えてくれたのでしょうか、量は少ないものの、ワイン造りのためには十分な熟成をしてくれました。

予定の収穫日には半袖でも暑いほどの好天に恵まれ、集まってくれた友人たちと丁寧に一房ずつ摘み取っていきます。
みんなで楽しく喋りながら作業の終わるころには昼食となります。
毎年恒例ですが、この日も昼食は友人たちへのお礼にごちそうを振舞います。
冷えたシャンパーニュやワインも用意して、収穫を祝うのです。
美味しいものを食べながら、たっぷりワインも飲み、友人たちの笑顔に囲まれるのは幸せな時間です。

◇除梗作業(エグラパージュ)
昼食の後からは醸造家としての仕事が始まります。
普通は摘み取ったブドウは機械にかけ一瞬で実と茎を分けますが、それではよい実も悪い実も一部の茎もすべて樽に入ってしまいます。
ですからドメーヌ・ウチダでは今どきフランス人もやらない手作業での除梗作業(エグラパージュ)を行います。
手間や時間は本当に格段にかかりますが丁寧に選果をし、黒い真珠のような美しい実だけを入れることでMIRACLEの優しい味わいに繋がりますので、絶対に譲れない部分です。
樽にブドウを入れると、一日に3回ほど人の手によってかき混ぜます(ピジャージュ)。
翌日にはふつふつとアルコール発酵が始まった音がしてきます。
こうして醸造作業のスタートです。

vol.3

こんにちは。ボルドーの内田です。 今年も日本は大変な猛暑だったようですね。フランスは初夏に異常な暑さでしたが、いざ夏になると冷夏で雨も多く、ワイン造りには厳しい夏となりました。
9月に入り、私の住むPAUILACCは毎年恒例のメドックマラソンの開催に向けて会場設営などが始まり、普段の静かな町とは趣が異なります。

◇メドックマラソン
メドックマラソンは、少し変わったマラソン大会です。
まず、毎年仮装テーマが決まっています。
今年は”MUSIC”!
スタートラインには、エルヴィス・プレスリーやマイケル・ジャクソン、ビートルズなどスーパースターに仮装した8500人もの参加者がひしめき合います。
私は日本のヴィジュアル系バンド風のコスプレをしました。なかなか好評でしたよ!

そして、一番特徴的なのは、各給水ポイントでのおもてなしだと思います。
収穫の近い美しいブドウ畑のなかを走るコースの中には、名だたる有名シャトーがテントを張り、参加選手にワインや生牡蠣、ステーキなどを提供します。
もちろん、好タイムを目指す選手は給水のみで全力疾走していきますが、ほとんどの参加者は用意された高級ワインに舌鼓を打ち、前菜からデザートまで欲しいものを好きなだけ楽しみます。

◇Marsalettes(マルサレット)
今回私は初めてMarsalettes(マルサレット)という、マラソン用の車いすをジョギングクラブのメンバーと交代で押しながら走りました。
彼は病気でほぼ身体を動かせない状態でしたが、今年40歳の節目ということで彼のお父さんと彼自身から参加への強い希望がジョギングクラブへあり、皆が賛同したのです。
学生時代に陸上部だった私は毎年記録更新を目指して走っていたのですが、彼の情熱に心を打たれ、また、私を受け入れて手助けをしてくれているメドックへの恩返しの意味もあって、この企画に参加させてもらうことにしました。
一人でただひたすら前を向いて走るのもいいですが、みんなで賑やかに走るのも思いのほかいいものでした。
Marsalettesを押しながら走るとき、前を行く人に避けてほしいときには”Chaud devant”と声かけします。
日本語で言うと「あっつ熱だよ~。どいてどいて!」という感じです。
日本だったら「すみませーん。」などと声かけするところですが、こういったところもなんだかフランスならではですよね。

vol.2

こんにちは。ボルドーの内田です。
第二回目の今回のコラムには、先日ボルドーで開かれた“ヴィネクスポ”について綴っていきたいと思います。

◇Vinexpo(ヴィネクスポ)
“Vinexpo(ヴィネクスポ)”とは、2年に1度、奇数年にワインの本場であるボルドーで開催されている非常に大規模なワインとスピリッツの展示会です。
大きな会場の中だけでなく、ボルドー中のワイナリーがこぞってイベントを開催期間中に行いますので、この4日間は町全体がお祭りムードに包まれます。

偶数年にはボルドー以外の世界中の都市の中から一か所で開催されるのですが、実は、2002年に東京で開催された時には当時、学生だった私のポートレートがポスターやパンフレットの表紙に選ばれたのです。
これはちょっと自慢ですね。
ですから、いまだにその時のポートレートをプロフィールに使うこともあって、ずいぶん若い時のではあるのですが・・・。
気持ちはわかっていただけるかと思います。

◇日本酒造組合から通訳として参加
今年のヴィネクスポでは初めて日本酒造組合から通訳としてオファーがあり、日本酒や焼酎を紹介するブースに参加してきました。
驚くのは欧州での日本食に関する関心の高さです。
中には日本酒の製造方法にまで興味をもって詳しく質問をされる方もいらっしゃいました。
日本国内でもドラマの影響もあり、日本産のウイスキーの人気が再燃しているようですが、ここヨーロッパでも日本のウイスキーは近年、常に品薄で大変な人気です。
私の担当していたブースでも、なにやら大規模な商談がまとまっていたようでした。
フランス国内でも日本の酒が流通して手に入りやすくなると、在仏の日本人としては嬉しい限りです。
また、個人的には小柳先生の酒販学院で学びましたので、日本酒や焼酎の製造方法の基礎は理解しているので、まさか欧州でそのことを話すことになるとは思いませんでした。
ワインを学ぶのであれば、すべての酒の工程を理解しておかなければ、本当の理解にはつながらないと当時よく指導されたものです。

ところで、フランスにお越しになったことのある方でしたら、あちこちに日本食のレストランのあるのをご覧になっているかと思いますが、ここボルドーでも何件か営業しています。
特にラーメンは大人気で、1杯9~13ユーロほど。
餃子やビールもつけると決して安くはないのですがいつも行列ができています。
やはり味は欧州仕様ですが、私もたまに日本の味が恋しくなると、ついつい並んでしまっています。 皆さんもぜひ召し上がってみてください。

vol.1

今回からコラムを書かせていただきますワイン醸造家の内田修です。
初めてフランスにホームステイに行ったワイナリーでワインづくりに魅了されてから、ワインとワインづくりに欠かせないブドウづくりをボルドー大学で学び、20年近くが経ちました。
ボルドーという街の名前は日本でもよく聞かれることもあるかと思います。
パリとはまた違った雰囲気の、「古都」という感じの漂う街です。
日本での都市で当てはめるなら京都のような位置づけになるでしょうか。
市街地が三日月の形のように見えることから「月の都」とも呼ばれています。
海も近いので新鮮な海産物にも年中恵まれています。
日本では冬の食べ物である牡蠣も通年食べられます。フランス人の大好物ですね。

◇「MIRACLE」という名前のワイン
まだフランスに来て間もない頃、フランス語もろくに話せない、それでもワイン造りを学びたいと、アポイントも取らずに「働かせてください。」とドアを叩いたワイナリーは、
今住んでいるボルドーのポイヤック村の家からわずか10分ほどの場所であることに強い縁を感じます。
きっと当時は何の役にも立たなかったでしょう。しかも日本人の、子供のような若者です。
それでもオーナーと奥さんは私を迎え入れてくれ、ワイナリーでの仕事を一緒にして、食事もとらせてくれました。
もちろんいいことばかりではありませんでしたが、とにかく真剣に取り組んでいく中で周りのサポートもあり、現在は1ヘクタールの畑で自分のワインを造ることができています。
そんな当時からすれば奇跡のようなことから「MIRACLE」という名前をワインに付けました。

◇ワインを通したご近所との繋がり
普段はほぼ一人で畑の手入れをしていますが、時間との闘いの収穫の時期には近所のワイナリーの友人やそのまた友人たちや、そして私自身も友人の畑の収穫を手伝います。
その土地に根差した農業ですから、助け合いが大切なのです。
ここでは日本人は私一人ですが、我ながらすっかり溶け込んでいる状況です。

そんな日常を今後お伝えしていければと思います。