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活動報告

チェルシーフラワーショー2025最終レポート「この経験をよりよい家づくりへ。」

チェルシーフラワーショー2025は、
5月20日から24日までのショータイムで審査を終え、ショーガーデン部門で「Cha No Niwa – Japanese Tea Garden」を出展した、石原和幸氏がゴールドメダルを受賞。
さらにこの作品はチェルシーフラワーショーの「ガーデンオブザイヤー」に選出されたばかりか、観客が選ぶ「ピープルズチョイスベストショーガーデン」も受賞し、3つの賞の同時受賞となりました。
また、石原潤氏はコンテナガーデン部門に、「Secret Base – The Another Green Room garden」を出展し、シルバーギルトを受賞しました。
数々の賞を獲得したチェルシーフラワーショー2025に参加した諸戸の家の4名は、この経験をよりよい家づくりへと昇華させていきます。

手刻みの経験を積み、大工としての幅が広がった!世界で戦えるような強い家づくりチームを目指す。

島 涼太(諸戸組 棟梁リーダー)

今回の収穫は、何といっても手刻みで一点モノをつくり上げていく経験ができたこと。寸法に合わせて木材に墨付けし、ノコギリ、カンナ、ノミなどの道具を使用し、継手や仕口を加工する伝統的な工法は、日々の大工作業では経験ができません。さらに諸戸の家の他のメンバーよりも先に現場に入ることができたため、じっくりと仕事に向き合うことができ、他の職人さんたちともしっかりとコミュニケーションを取ることができました。この時間があったからこそ、信頼関係を築くことができ、より深い話ができたと感じています。
現場作業の中で印象に残っているのは、石原先生のショーガーデン内に流れる「小川」です。この小川は石で段をつくり、上下方向の動きを出しているのですが、どのように段を組めば、美しく水が流れるかにこだわってつくっています。しかもほぼテストができない状況でつくっていくわけですから、神業としか言いようがありません。隣の出展者も「自分たちではあんなにうまくできない」と感心するほど。このような繊細な作業は大人数で取り組むとうまくいかないものです。実際の作業は2人のみで行っており、こういった部分も石原先生の采配が生きていると感じました。
コンテナガーデンは本当に悔しかったです。屋根やカウンター、ベンチは諸戸の家が主動で作業をしていたので余計にです。でも、日本で事前の準備をしっかりとして、夜中まで試作を繰り返し、現地でもやりきったので後悔はありません。メンバー全員で取り組めたからこそ、達成感も大きかったです。
今回、手刻みの経験を積んだことで、より大工作業の幅が広がりました。また、現場監督としてのあるべき姿も学びました。現場監督は現場の顔となる存在です。自分たちの指示の仕方、態度で職人さんたちの士気も変わります。これまでも諸戸の家のポリシーを貫くため、細部にまでこだわり、その想いを職人さんに伝えていましたが、今回の経験でそれをどのように伝えるのか、より深く伝えるためにはどうすればいいのかをさらに考えるようになりました。石原先生のような世界で戦える強いチームをつくれるよう今後も努力していきます。

図面にとらわれず、現場で臨機応変に変え、より良くしていく精神。英会話力を試す良い機会にもなりました。

濱畑 かい(諸戸組 棟梁)

去年は職人さんたちと行動を共にする機会が多かったのですが、今年は職人さんだけでなく、他の出展者や街の人と話す機会にも恵まれました。
今回は石原先生の3冠達成という歴史的な偉業に立ち会え、一緒に取り組めたことは大きな自信となりました。特に茶屋の完成度の高さは圧倒的で、去年は建屋に続く通路が2つあったのですが、今回は1つだけに絞り、あえて立ち入ることができないスペースを増やしています。これにより、遠くから眺め、想像力を掻き立て、より情緒的なつくりにしてある戦略性の高さが印象的でした。最終的にできあがった作品は、当初の図面とは違うものになりました。職人をまとめているチーフは「完璧な図面はない。現場の状況に合わせて臨機応変に図面から変えていくが、図面よりも良くならなければ意味がない。そして図面よりも良くしていく過程をワクワクしながら楽しむ。その気持ちが大事」と語ってたことがいまでも記憶に残っています。
今回の経験を生かし、私も図面以上に良くするためにはどうすればいいのかを考え、さらに積極的に提案していこうと心に決めました。それにはプロデューサーとこれまで以上に密にコミュニケーションを取り、より深い家づくりの思想的な部分まで理解しあうことが大切だと、あらためて実感しました。
また、今回は庭づくり以外でも個人的に勉強している英会話能力を試す機会でもありました。諸戸の家が世界に進出することを見据え、自主的に始めた勉強ではありますが、まだまだ課題があると実感。ただ、ネイティブの皆さんと話す楽しさは、これからの勉強のモチベーションアップにもつながりました。
このチェルシーでの経験は、いわば非日常的な貴重なものでした。これから日常の中でも、図面よりもいい建物をつくることや、自己投資の継続でまだまだ成長していきます!

自ら考えて先を読み、行動する力がより強くなった。新たな人脈ができたことも大きな収穫。

菅 嘉孝(諸戸組 棟梁)

CFSに参加するからには、これまで以上に積極的な姿勢で仕事に向きあう自分になりたい。そう思って、現地では自分がやったことのない大工仕事や左官、ガーデニングなどを率先して行いました。そのおかげで相手が何を考え、求めているのか、それを察知しながら先回りして行動できるようになったと思います。たとえば、職人さんが作業をしている姿を観察し、次にどんな道具が必要なのかを考え、求める前にその道具を差し出すといった具合です。そのような考えで行動することで、だんだんと職人さんたちとの距離が縮まり、いろいろな技術を教えていただくことができました。
現場にはさまざまなジャンルの一流のプロがいます。左官や植栽などの職人さんと一緒に作業し、間近でその仕事を体験できたのも大きな収穫でした。多くの知識と経験が現場の応用力につながることを痛感しました。また、色々な職人さんと接することで、その仕事への興味がさらに湧きました。普段の仕事である現場監督は、それぞれの領域の仕事を詳しく知っていなければなりません。日常に戻っても、さらに知識と経験を重ね「菅に聞けば何でも知っている」と思ってもらえるように努力していきます。
幅広い人脈ができたこともCFSに参加してよかったことです。古民家再生協会の方と知り合い、古材の再利用について話を聞くことができ、今度、杉山プロデューサーと一緒に見学に行く予定です。そこでも新たな学びがあると思うので、その経験をまた家づくりに反映できるようにしていきます。

世界で戦える強いチームのあるべき姿、ディティールへのこだわりを学んだ。

杉山 貴紀(シニアプロデューサー)

ショーガーデンでの最も大きなトピックスは、メインの樹となる約7mのモミジを植えなかったこと。ただ、これはほんの一例であって、常に現場の判断で樹々の植え替えの連続でした。当初の図面通りにつくるのではなく、現場の判断でより良くするためにその場で変更していきました。このような変更の連続であっても、チームメンバーは柔軟に動き、自らも考え行動し、ただゴールドメダルを獲ることだけを目指して仕事をしている姿勢が印象に残っています。石原先生の人を惹きつけるカリスマ性、目指す場所を明確に提示できるリーダーシップ、そして想いをカタチにする職人の皆さんがいるからこそ、世界で戦える強いチームとなり、今回の結果につながったのだと思います。
他の出展者の作品を見ても、石原先生の作品は群を抜いてクオリティが高いと思いました。「その差はどこにあるのだろうか?」と私は考え、ひとつの答え(仮説)に至りました。今回、庭全体を歴史を重ねてきた印象にしているのですが、その雰囲気を出すためにさまざまな箇所をエイジングしています。その中でも私は庭の中にある御影石をハンマーで叩き、角を落としていく作業がありました。この作業、実に繊細で、離れたところから見ても作業の結果がほぼ分かりません。また、石原先生はどの角度から見ても隙がないように計算して庭づくりをしています。茶室のちょっとした隙間から見える構造体にも気を配り、手を入れていきます。
私が思ったのは、そのような細かい作業や配慮が(たとえ目に見えなくても)ピースとして合わさり、全体の雰囲気として醸し出すのではないか、ということです。今回、世界で戦える強いチームのあるべき姿や、ディティールへのこだわりが全体のクオリティを左右することを学びました。そして、その学びがプロデューサーとしての私をさらに成長させました。この経験を実際の仕事にも生かしていきます。
潤氏のコンテナガーデンは本当に悔しかった。ゴールドメダルを獲れたと思っていただけに、悔しくて涙したほどです。しかし、潤氏の切り替えの早さもすごかった。自分に足りないところは何かを自己分析し、ゴールドメダルを獲るためにはどうすればいいのかを考えていました。常に反省し、次に生かすための努力を惜しまない。その姿勢も大きな学びでした。

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