塗師
牧野昂太氏
[Profile]
金閣寺修復に二度にわたって携わった「牧野漆工芸」の四代目。現在は京都のみならず、全国の寺社仏閣の修復などに携わる。海外デザイナーと協業し、多様な漆技法を駆使することで、ハイエンドなインテリア家具やオブジェなどの制作にも挑戦する新進気鋭の職人である。
東京「代々木上原の邸宅」
日本伝統の漆塗りに新風を注ぎ込む、唯一無二の仕上げが、この扉の魅力です。
漆器は従来、鏡面のような艶のある光沢が美しいとされてきました。私たちはそんな価値観を大切にしながら、新たな漆の可能性にも挑戦しています。今回の依頼品は、リビングダイニングへ迎える大きな扉。これまでハイブランドとのコラボレーションは経験していますが、個人宅への提供はほぼなかったため、この作品が個人宅に据えられることにやりがいを感じましたね。扉は漆を塗った後にタンパク質(卵白)をかけて化学反応させる「ひび塗り」という技法で仕上げています。タンパク質の濃度や乾かすタイミングなどを調整し、ひびの大きさや形をコントロール。約2カ月かけて、唯一無二の扉を生み出しました。漆は経年変化で少しずつ色味が明るくなり、ひびの立体感が増すことで扉の奥行きも深くなります。そんな変化とともに、日本の伝統的な漆塗りをベースにした革新的な表現方法を愉しんでいただければ幸いです。

