牧野昂太氏
[Profile]
金閣寺修復に二度にわたって携わった「牧野漆工芸」の四代目。現在は京都のみならず、全国の寺社仏閣の修復などに携わる。海外デザイナーと協業し、多様な漆技法を駆使することで、ハイエンドなインテリア家具やオブジェなどの制作にも挑戦する新進気鋭の職人である。
名古屋「SUPER LUXURY The Chikaramachi」
リビングとエントランスホールの西面、アイランドキッチンの側面に漆塗りのパネルをご提供させていただきました。いずれも天然素材を使って手作りした唯一無二の品。漆塗りの伝統をベースにした新しい表現を愛でてください。

ーEntranceー
一枚の板ではなく、分割したパネルを組み合わせることは、初めての挑戦でした。複数のパネルを組み合わせることで、それぞれの表情や奥行きが異なり、より深みのある表現ができたと思っています。離れて見ると群雲のような風情を感じますが、近づいてみると、細かなヒビが表情を与えているとお気づきになると思います。

ーLivingー
漆塗りでありながら、金属的な表現に挑戦したのは、いまから4年前。異素材の組み合わせは、これまでの漆塗りにはない新たな表現を与えてくれました。さじ加減ひとつで変化する表情は72枚それぞれにあり、天然素材ならではの面白味があります。化学材料を一切使用していないため、揮発物質でのアレルギーも心配無用です。

ーKitchenー
漆をパテ状にして、立体的な表現をする技法「たたき」。漆が乾く前に模様を付けていくことで、独特の表現が可能となるのですが、同時に時間との戦いにもなります。特にキッチンの側面は面積が広いため、作業は困難を極めましたが、その分、手作りでしか成し得ない美しい表現ができました。深い森の湖畔でさざ波が放射状に広がるような表情をお楽しみください。

東京「代々木上原の邸宅」
日本伝統の漆塗りに新風を注ぎ込む、唯一無二の仕上げが、この扉の魅力です。
漆器は従来、鏡面のような艶のある光沢が美しいとされてきました。私たちはそんな価値観を大切にしながら、新たな漆の可能性にも挑戦しています。今回の依頼品は、リビングダイニングへ迎える大きな扉。これまでハイブランドとのコラボレーションは経験していますが、個人宅への提供はほぼなかったため、この作品が個人宅に据えられることにやりがいを感じましたね。扉は漆を塗った後にタンパク質(卵白)をかけて化学反応させる「ひび塗り」という技法で仕上げています。タンパク質の濃度や乾かすタイミングなどを調整し、ひびの大きさや形をコントロール。約2カ月かけて、唯一無二の扉を生み出しました。漆は経年変化で少しずつ色味が明るくなり、ひびの立体感が増すことで扉の奥行きも深くなります。そんな変化とともに、日本の伝統的な漆塗りをベースにした革新的な表現方法を愉しんでいただければ幸いです。

